キリムNo.: KJ9725
産地: シャルキョイ、アンティークキリム(ウール/ウール)
寸法: 214x70cm
価格: 374,000円
ヨーロッパ側トルコ、シャルキョイのアンティークキリムというと、動物性染料、コチニールの深い深紅色が頭に浮かびますが、このように植物染料が原料の落ち着いた色調も、もはや少量ですが、伝えられています。これは1993年に手に入れました。
19世紀後半のオスマントルコ時代、トルコ領であった北アフリカのカナリア諸島で盛んに生産されたコチニールは、独特の深紅色の深い美しさが羨望の的となり、最高の動物性染料として高値を呼びました。
当時、このコチニールのキリムを使えたのが、東欧の高級官僚やスルタンです。彼らの屋敷や宮殿の床や壁を飾った華やかで深い色調の緻密な織りのシャルキョイキリムは、誰もが称賛するほど美しいものでした。現存する、当時のキリムは高値の花ですが、その価格でも頷けるほど色調も織りも魅力があります。
当時、多くの織り手達が使った染料はこのように植物の根です。
東欧系のこの織り手は、縦糸も横糸も先祖がしたように細く強く撚り、どこまでも精緻で薄いキリム織りに心を砕きました。綿糸のように細いウール糸は百数十年の使用に耐え、大変薄いキリムであるにも関わらず修理はなく、いかにウールが上質だったか、いかに織りが緻密であるかを語っています。
植物染料では黒色が染められなかった時代、多くの織り手は、濃い羊のウールをインディゴで染め、黒色に近づけています。これはこれで、華やぎがあり見事です。
このキリムのボーダーを囲む黒に見える色は、天然の濃い羊の毛です。技術の高いこの織り手は、時間をかけ天然の濃い茶の毛を撚り、藍色で染めることなくそのままボーダーに使っています。
織り手は、柔らかい茜色、天然の白、天然の濃い茶を組み合わせることにより、より自然に近く、柔らかい雰囲気のキリムに仕上げました。100年以上の時間が経過する中、このキリムはいつの時も、落ち着いた大人の雰囲気を見せながら、使われる空間に時空を超えた息吹を運んでいます。
ベレケット=豊穣、 眼=邪視除け、 狼の口=邪視除け