キリムNo.: KJ37674a
産地: ベルガマ、ベイリーオールドキリム
寸法: 72cm X46 cm
価格: 41,800円
西アナトリア、ベルガマは芳醇な土地の恵みを受け、上質のキリムが伝えられてきました。特に濃い茜と濃い藍色の縞柄のキリムは、伝統的キリムでありながらも私達の空間に使い易いキリムとして、キリムをご存じの人達や縞が大好きな人たちに人気があります。
問屋さんの入り口近くで、無心に手を動かしている修理人の手元に目が留まりました。「小さいのにずいぶん複雑で深い色調ね。染色巧者の仕事だわ。」と、話しかける私に笑顔を返す彼の後から、「さすが、日本のキリム屋さんだ!」と、大きな声が飛んできました。
これは本来が2x1.5mほどの大きなキリムでした。各箇所に要修理部分があるキリムですが、100年近い上等のウールのキリムに見合う修理糸が見つかりません。そこで問屋さんは、ベルガマの伝統に沿った深い色調のキリムをいくつかのクッションにしましたが、一番美しい部分はタペストリー用に小さなサイズのキリムにしていたのです。
両端は、横糸一段ごとに括り糸をそれぞれの色でかけています。気の遠くなるような作業に集中している若い修理人は手元を休めることなく、見ている私達に恥ずかしそうな笑顔を、時々見せます。祖母や曾祖母が織り、使い継がれた部族の宝物は、器用な手先と根気、そして先祖を誇りに思う気持ちが見事に再生させました。こんな若い人々にもしっかり伝統が受け継がれていることに驚き,感嘆の言葉を贈ったのは言うまでもありません。
裏返すと、このキリム本来の色が見えます。
褪色して天然の焦げ茶になった色が、表に見える色です。その焦げ茶が裏側では、濃い藍色です。ベルガマ伝統の、どこまでも黒に近い藍色を目指した織り手は、何回も濃茶のウールを染めました。空気も水も現代よりはるかにきれいだった100年近く前、健康状態の良い羊のウールは、今よりはるかに艶やかで丈夫でした。赤色もしかりです。
光が大事に褪色させた色調は、時間により様々な表情を見せてくれます。
そんな大切な子孫からの贈り物を見分けた私達に、問屋さんは有難いほどの価格で、このキリムを渡してくれました。出合った方に、沢山の人々からの贈り物のキリムです。