キリムNo.: KJ0737
産地: コンヤ、アンティークキリム
寸法: 128x71cm
1989年、壁に掛けられたしっかりした織りの小ぶりのキリムは、見馴れた赤紫です。メディテーションという言葉が瞬間浮かんだほど、きりっとした雰囲気は格調高く、懐かしさも新しさも感じさせる独特のオーラが私達を呼んでいました。
高い染色技術を伝える色出しは、藤色、紫、赤紫などの紫色を楽しませてくれます。お祈り用デザインのキリムですが、クラシックでモダンでおしゃれです。当時、キリム初心者の私達は、懐かしい日本の色に通じるキリムに、素晴らしい掘り出し物をした気分でした。
日本では、紫は推古天皇の時代、12の位階を表す冠衣の色の一つで、高い位の衣服などに使われました。高い位の紫色が、同じく格調高い色としてキリムに使われていた共通点の発見は、益々、表情豊かなトルコキリムに惹かれていく理由の一つとなりました。
小さなミフラブ(礼拝用)デザインのキリムは、一日5回モスクで礼拝するイスラム教スンニー派の人々の必需品です。偶像崇拝を禁止するスンニー派のモスクは、日本では仏像が置かれている場所が丸い窪地になっています。その方向は神様のいらっしゃるメッカを指し、ミフラブデザインを敷き一体感を感じながら祈りを捧げます。
このキリムの色使いは、テントの中のインテリアと言うより、敬虔な祈りを捧げる為の格調高い特別な色に思えます。持ち主は、位の高い部族長や長老、そして織り手は部族一の熟練者でしょう。
大事に使われ続けたお陰で、キリムはすっかり無駄下がとれ滑らかです。上等のウールはほぼ芯になり、鮮明な色はそれぞれの色の深さを見せています。
右肩上の黒に見える濃い色は、天然のウールです。織り手は、濃い茶、チャコールグレー、茶などを混ぜることなく別々の糸に撚り、黒に近い厚みのあるピュアな世界を作るべく、それぞれの糸を横糸に入れ、表現力の違いを見せつけています。
左の藤色は昼、右の黒色は夜を表しているのでしょう。中心には星が描かれ、神様のいらっしゃる天国が、織り手の宇宙観を通して描かれています。大事にお祈りの時のみに使われたキリムは、独特のオーラを放ちながら、私達をイスラムの世界に誘います。
ミフラブデザイン=礼拝用文様、 眼=邪視除け、 星=幸せへの願い、櫛=幸せな結婚を願う