キリムNo.: KJ21636
産地: シバス、ベイリーオールドキリム(ウール/ウール)
寸法: 149x85cm
価格: 198,000円
「何を使ったらこんな赤い色になるの?」と声を上げる私たちに、「?」と、肩をすくめたオーナーです。
濃い赤の茜色と暗い赤の臙脂(えんじ)色に黄み赤の朱色が合わさればこのくらい濃い色になりそうです。すなわち、青、赤、黄に黒っぽい色を出す何かを加えた色の基本色が使われているようです。あるいは、手にした憧れの赤い化学染料を加えているかも知れません。色は、色出しした織り手のみが知る世界です。
ボーダーの黄系の色も、赤と黄の割合を違えながら、黄、山吹、きはだ、黄金、黄土色など、魔法使いの様に自由自在の色出しを楽しんでいます。
キリムが100年あるいはそれ以上持つ絶対条件は、上等のウールです。新鮮な水と土が育てた植物が健康な家畜を育て、上質で丈夫なウールの生産へとつながります。
上質のウールの滑らかさやツヤは、織り手に実力以上の自信を与え、織り手のやる気を一層引き出します。やる気満々で向かった上等のウールは、健康な植物のお陰で、目を見張るほど深く高い透明度を見せる色に染まり、織り手は染めることに益々自信を持っていくのです。
空気も水も今よりきれいだった時代の織り手達は、現代よりはるかに豊かな環境に囲まれていました。乾燥地帯の真っ青な空、輝く太陽、移り変わる自然、などが見せる透明感あふれる光景に見惚れながら、織り手は知らず知らずのうちに観察眼を磨き、微妙な色彩感覚を身に付けていったのです。
ほんの少し色の配合を変えるだけで幅のある色出しが出来る織り手は、頭にこびりついている朝焼けの空や夕暮れ時をイメージしながら、色出しをしていきました。最上級のウールと織り手の高度な染色技術、そして創造力が見せるどこまでも深い色の世界です。
大事に使い継がれたキリムは無駄毛が取れて滑らかです。大切に使っていた子孫が洗濯をしましたが、水が少なかったのか、あるいは、流し洗いが十分でなかったのか、赤色が少し滲んでいます。これもキリムの表情と思ってくださる方に、出合えますよう願います。
櫛=幸せな結婚を願う、 水の流れ=生命を支える水が常に身近にありますようにとの願い