キリムNo.: KJ7747
産地: アナドルー, アンティークキリム
寸法: 161x119cm
出合ったのは1991年の秋です。
ウインドウの外から見ても強力なパワーを発しているキリムに惹かれ、広い店のドアを開けました。奥中央に掛けられていたキリムは、神々しい光を放ち、まるでモスクの中にいるかの様に、圧倒的な重厚感で見る者を惹きつけていました。
しばらく目を離せない私達にオーナーは、「天上のダウンライトの光の演出さ。まるで楽園から神様が舞い降りて来そうだろう?」と、晴れ晴れとした表情を見せました。
見たことのない濃い色調はとてもモダンです。最上級のウールのツヤがキリムを一層輝かせています。そして、ため息が出るほど細かくしっかりした織りが、キリムの存在感をより強調しています。オーナーさん、「これはすべて化学染料が使われたオールド後半のキリムだよ。」と、満足そうな笑顔を見せました。
化学染料がドイツで生まれたのが1866年です。
瞬く間に広まった染料は、当然、好奇心が強く感性あふれる遊牧民たちの、憧れの染料となりました。草木染で染色をしてきた織り手たちには、植物では出すことの出来ない見たこともない化学染料の鮮やかな色調は、夢の色であり、憧れの染料となったのです。
当時、高価な化学染料を使えたのは、部族長の家族か織りの達人など特別な人達でした。
出合いから20余年が経過したこのキリムは、アンティークになりました。
赤、黄、藍を基調に、ワインレッド、紫、黄緑、黄土色などを生み出した確かな技術は、100年近い時間を超えて、クラシックでモダンな色調が人目を強く惹きつけます。
最上級のウールは益々輝きを増し、まだまだ主役を演じ続けるキリムです。
部族の文化伝承にエネルギーを注ぎながらも、常に、新しい時代の風をしなやかに受け入れてきた織り手たちがいたからこそ、キリムはいつの時代も魅力ある織物だったのです。
ミフラブ=礼拝用デザイン 生命の樹=不滅の繁栄 眼=邪視除け
鳥=幸せの予感 S字フック=邪視除け