キリムNo.: KJ11690
産地: ハッカリ, アンティークキリム
寸法: 190x113cm
価格: 418,000円
1993年秋、ウインドーに飾られたキリムの深い赤紫に惹かれ入った店は、クルド族のキリムで埋め尽くされていました。東トルコの山岳地帯のバン、ハッカリやマラティアなどに多いクルド族は、織りの名手ということは教わっていましが、エスニック柄で、濃い赤、青、白のパワー溢れるキリムは、初心者の私達には近寄り難いものでした。
濃い色調で細かい織りのキリムを広げながら、オーナーは「深い赤紫はコチニールだよ。19世紀にカナリア諸島でコチニールが大増産され、高値の花だった染料が、当時は入手しやすくなった。オスマン・トルコ時代は、東アナトリアのクルド族の手元にまでコチニールが伝えられた。コチニールはサボテンに寄生しているカイガラムシが良く知られている。これから染料を作るには、大量のムシを採取し乾燥させ粉末状にする。色素が少量のため、沢山のムシが必要だから、今でも高価な染料には違いないね。当時では、高い技術の織り手のみが使える染料だったんだ。」と、説明してくれました。
100年前のムシの色?と思いつつ近づき、目を凝らして見ると、深い爽やかな赤色は、ピンクと青色を含んでいるようで、あまり目にしたことのない独特の青み系の赤色です。植物染料では出せない落ち着いたコクのある華やかな青み赤には、誰をも惹きつける独特の力がありました。色調に惹かれ、私達はハッカリの最高峰を手に入れたのです。
長い間憧れ待ち望んだ染料を得た喜びを、織り手は様々な色を染め出すことで表現しています。コチニールだけでなく、茜も基調に、何色かの赤色を染め出しています。コチニールを使いながら紫がかった茶色も手にしています。藍色の使い方もしかりです。織り手の鋭い感性は、工夫することに限界がないことを、色調を通して教えてくれます。
当時と変わらぬ表情のアンティークキリムは、ゆるぎない存在感で、キリムと言う織物の深さを見せています。
眼=邪視除け、 ドラゴン=豊かさをもたらす、 ベレケット=豊穣、
狼の口=邪視除け、 羊の角=繁栄、豊穣、 S字フック=邪視除け