キリムNo.: KJ12889-B
産地: カフカス、アンティークキリム
寸法: 93x73cm
価格: 91,300円
このキリムとの出合は1995年です。店の隅っこに、ゴロリと煩雑に丸められていたキリムに目が留まったのは、トルコキリムにはない深く落ち着いた色調のお蔭です。
広げてもらうと所々に痛みがありましたが、ツヤのあるウールと、トルコキリムでは見かけない色調と細かい織りがとても新鮮でした。
「どうするの?」と聞く私達に「カフカスの上等のアンティークだよ。織りもツヤも申し分ないが、あいにく修理糸がない。ツヤのない糸で直すより、クッションにした方がキリムも織り手も嬉しいだろう?」との、問いかけが返ってきました。
幅78cmx長さ2m位を、2枚に接いだキリムです。床敷き、間仕切り、タペストリーなどとして使われたサイズです。
無駄毛が取れた状態を見ると、敷かれながらも大事に伝え継がれてきたキリムのようです。まだ、当時はキリム初心者であった私達にも、問屋さんの悩みは解りました。いつか私達で修理しようと、あるがままのキリムを勇んで持ち帰りました。
約20年が経過した現在、やはり見合う修理糸には出合えず、問屋さんのアドバイスに従い、2枚の120㎝前後と4枚のクッションを私達のスタッフが作りました。
100年も昔に織られたキリムの縦糸は、白と茶の羊のウールで、ハサミを入れても簡単に切れないほど、強く丈夫に撚られています。そして、卓越した技術の織り手が細く撚った横糸は、丈夫な縦糸にビッシリ入れられています。
長い間踏まれ続けて、現在では小さなキリムになりました。全体の状態は良いのですが、中央に修理が見えます。修理人はこのキリムから草原をイメージしたのでしょうか?
黄緑、グリーン、モスグリーンなどを使い表情豊かで細かい仕事をしています。現在の修理糸を使っているため、100年の糸の横ではツヤがありませんが、これが現状です。
ボーダーのない横縞と文様の組み合わせに重厚感を感じさせる色調は、カフカス・シルヴァン(Shirvan)に伝わるキリムです。どの地域の遊牧民もそこにあった素材で、精一杯の工夫と努力を重ねながら、部族を象徴するキリムを織り継いできました。その心意気を現代の子孫がしっかり受け継いでいることに、心が温かくなったのを思い出します。
水の流れ=生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い