キリムNo.: KJ33510
産地: ムット,オールドジジム
寸法: 101x81cm
価格: 91,300円
思わず唸り声を上げたくなるほどの仕事をしているのは、ムットの織り手です。
チュアル(衣類袋)だったクッションのような大きな袋は、縦糸に細く強く撚ったヤギの毛が使われています。 横糸の地は、これもしっかり撚られた天然ウールの焦げ茶です。
赤、緑、オレンジ、藍、藤色そして白を使った色沢山なのに、落ち着いた雰囲気のジジム織りから、技術の高い織り手のエネルギーが伝わります。
柔らかい草が好物で集団で移動するおとなしい羊と違い、運動量が豊富で、単独で動き回り,木の芽も食べるヤギが、標高2000m付近の山岳地帯ムットでは飼育しやすく、遊牧民たちは、多くのヤギを飼っていました。各地の山岳地帯で織られたキリムの縦糸にヤギの毛が使われているのは、こんな理由からです。
もこもこと柔らかい羊の毛と比べると、運動量が多いヤギの毛は、固くおまけに直毛です。
カーリーで絡み合う羊の毛は、糸作りの初心者でも容易に扱えますが、真っ直ぐなヤギの毛は、糸同士が絡み合うことがないため、糸を撚る高度な技術が必要でした。
多くのキリムにヤギの毛が横糸に使われていない理由は、時間と共に撚りを掛けた毛が、元に戻ってしまい痛みの原因になる為と、糸作りが難しい為です。
ムットの織り手たちは、難しいヤギの毛を縦糸に使い、横糸で包み、その上にジジム(刺繍)織りを加えています。
このスタイルは、ヤギの毛を使う様々な遊牧民たちに共通に伝えられてきました。
難しい素材に向かい沢山の努力を積み重ねた結果、どの地域の織り手たちも、ヤギの毛を縦糸に使うという共通の答えを出したことに、納得します。
織り手は、初めから終わりまで、力を抜くことなく、規則正しい柄付けで、型紙のない織物を見事に織り上げました。
タペストリーや床敷きなど、どのような空間でも落ち着いたパワーを発揮してくれるキリムです。
水の流れ=生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い、
羊の角=繁栄、たくましさ、 眼=邪視除け、 バードック(ごぼう)=裕福