キリムNo.: KJ35572
産地: ディアルバクル、オールドキリム
寸法: 143x95cm
価格: 165,000円
東トルコ、ディアルバクルは、イラク国境に近い、乾燥地帯にあります。
何年も前の夏、初めて訪れたディアルバクルは、色の少ないこのキリムのような褐色の町でした。乾燥地帯の爽やかさを堪能しながらも、締め切った窓から入って来る細かい砂に、緊張しながら過ごした時間が思い出されます。
そのような土地では、キリムの出来の良し悪しは織り手の感性にかかるようです。
この天然のキリムは、縦糸にウール、横糸はウールとキャメルが使われています。茶、チョコレート、ベージュなど、ナチュラルな糸を根気強く色分けしながら、いかにキリムに表情を与えるかが、この地域の織り手の大きな仕事だったようです。
天然のウールのキリムは、トロス山脈の中腹のムットや中央アナトリア、コンヤにも伝わっています。ムットは、ディアルバクルと同じ山岳地帯のため、植物が多くありません。織り手たちは、与えられた素材を工夫しながら使うことが身についている人たちです。
11~13世紀、セルジュク・トルコの都であった京都のような文化都市コンヤでは、天然のキリムは織り手の嗜好で織られているようです。いつも色を手にできる織り手には、選択肢があったのです。
地域差はあれどの織り手も、自分が置かれた環境で創造力を鍛えながら精一杯のキリム作りに精出ししている所に、キリムの神髄があるように思えます。
この織り手は、ウールのみならず、貴重なキャメルもキリムに加えています。
羊は飼育されている家畜ですが、高価なラクダは、移動の際に必要なステイタスとして、大事にされた動物です。キャメルはウールより柔らかな繊維ですが、数が少なく、何年もかかり一枚のキリムの糸になるほどの貴重品です。
キリムの表情を上品にまとめる力を持った織り手のセンスが、キリムに力強さより優しい柔らかさを当てています。
無心に織りに集中した織り手の澄んだ気持ちが表現されているような織り物は
、どのような空間に置かれても光ります。