キリムNo.: KJ23477
産地: シバス、オールドチュアル
寸法: 160x110cm
チュアルとは、衣類袋のことです。
一年中、羊やヤギなどの家畜を連れ、水と草を追い求め移動を続ける遊牧民は、直径4~5mのテントで暮らしました。移動に不便な木の家具は持たず、家畜の毛を糸にし、傍にある植物で染め、クッションのような大小の袋にして家具として使いました。
テントの出入り口のドア、テーブルの役目を果たす食卓用の布、床敷き、間仕切り、壁掛けなども、家畜の毛を使い作られました。
移動の際、これらの家具をラクダやロバの背に括りつけ運びました。移動は常に他人の土地を通過するため、遠くからで部族の身元が識別できるよう、多くのチュアルは、部族を象徴する柄(家紋)が織り込まれました。
また、上等のチュアルは、人目に付き易い、目立つ所に置かれました。移動は、その部族の織りの技術の披露の絶好のチャンスだったためです。
それは、部族間の富の交換が、キリム、動物、貴金属、放牧や水の権利などで行われたためです。キリムを織る技術は、このように一家の繁栄へと固く結びついていたのです。
グリーンとオレンジに化学染料が使われているこのチュアルは70~80年ほど前の物です。ワインレットにも発色剤に鉱物が使われているように見受けられます。
草木染めで染めるのと同じ工程をふんだ、切れの良い染色技術は、時間が経った現在、それぞれの色に豊かな表情を与えています。上等のウールが使われている古さを感じさせない色調は、透明感があり、和空間からモダン空間まで広く楽しめます。
織り手は細かく織り込んだ柄の部分に、コットンを使っています。ウールが使い込むほどに落ち着きを増してくるのに対し、コットンは白さを増していきます。その白さがアクセントとなり、古いのに新しいキリムが目の前にあります。
ドラゴン=豊かさをもたらす、 眼=邪視除け、 羊の角=繁栄、たくましさ