キリムNo.: KJ5656
産地: マラティア, ベイリーオールド
寸法: 252x81cm
価格: 220,000円
1991年に出合ったマラティア・ランナーは、あれから22年経ち、そろそろアンティークです。上等なウールと高度な技術のお蔭で、使われ継がれてきたランナーは、今、最も艶やかな表情を見せています。懸命な仕事に惹かれ手に入れたランナーです。
縞柄を織ったマラティアの織り手は、白と黒のコントラストの強いランナーを作りたかったようです。芳醇な土地マラティアで、一年中様々な植物からの色を楽しんできた織り手のゆとりや情熱が、新しい色調にチャレンジさせたのでしょう。
ウールを天然の白、茶と濃茶に分けました。濃茶は藍色の液を使い、黒色に近づける作業を何回も繰り返しています。当時、黒色は化学染料でしか出せない色でした。藍色を何回もかけられた濃茶は、オフブラックに近づきました。オフブラックとは、一見黒だが、よく見れば黒ではない色です。
織り上がった横縞のランナーはウールのツヤも手伝って、マラティアには珍しいモダンキリムとして、周囲の目を惹き、大事に使われたことでしょう。
使い継がれたランナーに、後に刺繍織りで「S字」を加えたのは、やはり腕に自信を持った子孫の織り手でした。日々、目にする祖母の仕事に感動し、刺激を受けた娘は、どうしても祖母の仕事に参加したくなったようです。
でも、糸作りも、染めも、織りも完璧な仕事に参加する余地はありません。考えをめぐらした結果、孫娘が見つけたのは、刺繍を加える事でした。
祖母と対話しながら、織り込んだ「S字」は、いったいいくつあるのでしょう?
まだ若い織り手の染織技術は、祖母には及びません。赤糸の色止めが不十分のため、白地にかすかに赤色が乗っています。
何人かとの合作作業は、ランナーに一層の力強さを与えています。
キリムとは、遊牧民女性たちの織りの文化であることを、再認識させてくれるキリムです。
S字フック(鍵)=邪視除け