キリムNo.: KJ19509
産地: コンヤ、オールドキリム
寸法: 125x112cm
価格: 132,000円
いつも目にしている伝統的な色使いでないキリムを目にしたのは、1999年の秋でした。
広げてみると見馴れた狼の口や星のデザインが、新しい色調で力強くおしゃれに表現されたキリムは、その大きさ以上の力を発揮していました。
ワインレッド、オレンジ、濃い紫、草緑に天然の濃い茶、その濃い茶に色をかけた黒に近い濃い茶、が使われたキリムは、化学染料で染められた糸を使っています。
1866年、ドイツで生まれた化学染料は、瞬く間にキリムの織り手達の間にも広まりました。当時、お金のいる化学染料は、部族長の家族や織りの名手のみが使えた貴重品でした。が、植物では出す事の出来ない化学染料の色は、織り手達の憧れでした。何とか手に入れたたった一色の化学染料を彼女達は工夫し、アクセントとして使い続けました。
1950年以降、キリムが外国人の目に触れ始め高い評価を得るようになると、化学染料も織り手達に行き渡る様になりました。
伝統的なキリムとは違った新しい色を手にした織り手達は、独自の色彩感覚と技術で、新しいキリムの世界を創造し始めたのです。
70年位前のこのキリムからは、織り手のやる気が伝わってきます。
一度で色出しが出来る化学染料を使いながらも、織り手は草木で染めるように、何回か染めを繰り返し、どの色も深みのある濃淡の色糸に染め上げています。
特筆すべきは濃い茶色です。無染色の羊の糸でまず濃淡のある糸を撚っています。黒の染料を持たない織り手は、その糸をワインレッドを染めた液に浸して黒に近づけ、次に藍色の液を使い一層濃く、黒に近い色出しをしています。
出来上がった膨らみのある新しい色調のキリムは、草木で染められたキリムのように、時間や光の高さで違った表情を見せています。当時、織り手が胸躍らせながら染め出し、織り上げたキリムに使った労力やエネルギーが広がるクラシックでモダンな空間が、明日への力を与えてくれます。
狼の口=邪視除け、 星=幸せへの願い、 足かせ=友愛、 櫛=幸せな結婚を願う