キリムNo.: KJ36337
産地: デニズリ、新作草木染キリム(ウール/ウール)
寸法: 117x95cm
価格: 83,600円
遠目からライトベージュ、チョコレート、黄土色の茶系とパステルな空色と緑糸のグラデーションに見えたキリムは、近づくと、全体に花柄が織り込まれています。チューリップ、稲穂、葉などの具象柄のキリムは、いやでも見る私たちの気を惹きました。
イスラム教スンニー派が多数を占め偶像崇拝を禁止しているトルコは、そのキリムのほとんどが幾何学様です。キリムの柄は、宗教を始め、織られる地域や部族により異なります。
この花柄は、「ベッサラビアン・デザイン」と呼ばれ、オスマン・トルコ時代、トルコが占領したベッサラビアと呼ばれた国の柄です。ロシアの南にあった国で、現在はモルドバとウクライナのある地域です。
オスマン・トルコに占領されたキリスト教国ベッサラビアには、美しい具象柄の色彩豊かで繊細な織物が伝え継がれていました。幾何学文様の織物を見慣れていたトルコ人達は、その緻密な美しい具象柄に瞬間に心を奪われたに違いありません。織り手達は、この図柄をベッサラビアン・デザインと呼び、トルコキリムの中に取り入れていきました。
19世紀、トルコに伝わったベッサラビアン・デザインはその優しい愛らしさが、瞬く間にあちらこちらの織り手たちに広まって行きました。そして、現代の織り手たちにも、人気のある柄です。
デニズリの問屋さんは、東欧向けには、大きなサイズで黒色や赤色の情熱溢れる花柄を画面一杯に織り込んだキリムを作っています。ヨーロッパ向けには、大きなサイズの優しいパステル調の花々を、日本人には、このように控えめの色調で、ひそやかで奥ゆかしさがある、和室にも使える小柄で小さいサイズを織っています。
それぞれのお国柄を良く研究し情報を持っている問屋さんには、感心させられます。
まるで無地のような顔をして、光を当てると柄を浮き上がらせるキリムです。
花々は流れる水の上に浮かんでいるように見えます。これは運針(うんしん)と言われる、雑巾を縫うとき、一針一針、チクチク縫っていく時間のかかる作業です。根気強く手を動かすことで、水の流れの上に浮かぶ花々を立体的に見せています。
現代の輸出用キリムであれ、織り手が納得いくまで自分の世界に没頭しているからこそ、
若いキリムがオールドに負けないパワーを放てるのです。