キリムNo.: KJ16264
産地: マラティア、ベイリーオールドキリム(ウール&ヤギ/ウール)
寸法: 148x119cm
価格: 187,000円
1997年、「僕の先祖の文化だよ。」と言うクルド人の問屋さんから手に入れたチュアル(衣類袋)は、通常より大きい袋です。ずっしりと重く、時間をかけて褪色した植物のほっこりした色調の落ち着きに惹かれました。「大きな袋ね。大家族用だったみたい。」と問いかける私たちに、「確かに。織り手は用途によりサイズを決める。これは豊かな一家の自家用のチュアルだろうね。家族全員の衣類を入れたり、家財道具を入れたりして使った。今では幅がある敷物として使える。中々、合理的だろう?」と答えた問屋さんでした。
裏をかえすと、染められた当時の色が見えます。
マラティアの上等のウールは何回も染めを繰り返されながら、織り手が目指したコクのある色調に染め上がりました。当時の自然がいかにクリーンであったかを、透明度の高いそれぞれの色が語っています。
長い遊牧生活の間、毛の改良を続けた先祖の宝である上質のウールが、色調の美しさを助けていることは言うまでもありません。
マラティアはクルド人の町ですが、交通の要所だったお陰で、トルコ人、アルメニア人はじめ様々な人々が交易品を持ち行き交いました。マラティアの織り手達は、好奇心の電波を張りめぐらし、貪欲に新しい風をそれぞれの感覚に刷り込ませて行ったのです。目にする精緻な織り方や始めての色調は、大いに織り手を刺激し、自分の織物に取り入れていきました。
太く大らかな縞柄の中心に織り込まれているのは、この色調と同じくらい繊細なジジム織りです。部族の家紋と言われるジジム織りは、オレンジ、紅赤、紺、ダークグレー、紫、黄などの多色で、丁寧に織られています。縦糸は双糸(そうし)です。
移動の際、先頭のラクダの背にくくられ、どの部族かの識別の役割を果たしたのがチュアルです。
目にした他地域や他部族の技法や色調を瞬間に自分のものとできる腕の持ち主が、自信を持って染め織り上げたチュアルに、出合った誰もが見惚れたことでしょう。
今では過去から現在へと続く色調の褪色を見せている、貴重な教材です。
ベレケット=豊穣、 眼=邪視除け、 S字フック=邪視除け