キリムNo.: KJ8050
産地: マナスティル、アンティークキリム(ウール/ウール)
寸法: 152x96cm
価格: 297,000円
1991年、見事な朱色に惹かれ手に入れたキリムです。上質のウールが濃く鮮やかな赤色を見事に光らせ、思いのままに織り込まれたような柄付けが愛らしいキリムでした。植物の茜に何かを掛けたのか、もしくは、鉱物で染めたのか、濁りのない鮮やかな濃い色から目が離せませんでした。
当時の私たちは、目にしたことのある懐かしさを感じさせる色調のキリムとの出合に、大喜びでした。問屋さんは、これをシャルキョイ・キリムと説明しました。
トルコ通いのお陰で産地の見分けがつく頃になると、これを広げるたび、シャルキョイでは居心地悪い気分になってきました。
黒海沿岸のマナスティルのキリムは、その多くがルーマニアやブルガリアなどのバルカン半島からの移住者により織られているせいで、他のアナトリアのキリムとは違った雰囲気があります。また社会主義の時代、バルカン半島で織られたキリムがシャルキョイで取引されており、シャルキョイ・キリムとマナスティル・キリムの見分けが難しいのです。
伝統的シャルキョイ・キリムは、細い糸でどこまでも薄く、繊細に織られたキリムです。
礼拝用キリムの産地として有名なマナスティルには、ボーダーには赤、小豆やピンクを、フィールドと呼ばれる中心には黒や黄色が効果的に使われた、シンプルな色使いの上質のキリムが伝えられてきました。
テントや鳥が組み合わされた柄がボーダーに織り込まれ、他のアナトリア地域よりシンプルな色調がマナスティルの特徴です。
細く強く撚られた双糸は100年以上の時間が経っても健在です。この双糸は、色のコントラストをわざわざ強調しているかのようで、さり気なく二本の糸をまとめる洗練度の高い他地域の糸とは異なっています。
やる気十分の織り手が双糸作りに懸命に挑戦したようで、いかにも手紬糸といった味わいがあります。しっかり織られたキリムですが、細い横糸はギュッと詰めるのでなくホンワリ入れられており、それが暖色の暖かさを一層引き出しているようです。
長い時間をかけ謎解きをしていた私たちですが、キリムが我々を鍛えてくれたことに感謝です。
鳥=幸せの予感、 ベレケット=豊穣、 眼=邪視除け