キリムNo.: KJ14993-A
産地: ガジアンテップ、アンティークキリム(コットン/ウール)
寸法: 222x144cm
価格: 495,000円
1996年、問屋さんが案内してくれたコレクションルームに広げられていたキリムは、カシミヤのように繊細で柔らかそうなツヤツヤな織物です。伝統的な柄に違いないデザインはモダンで、まるでアートです。静寂さを漂わせるキリムに、見ている誰もが無言です。
見たこともない薄さに、織りをするスタッフが「これがキリム?」と上げた驚きと称賛の声は上ずっていました。
あれから20年、キリムは120歳くらいになりました。
ガジアンテップはトルコ南東部にある都市です。シリア国境に近く、古くはシリアとの交易の中継地として栄えましたが、ペルシャ、ローマ、ピザンチン、アルメニア、オスマン帝国など、様々な勢力の支配を経験してきました。現在はトルコ第6の都市として銅製品やピスタチオの産地として栄えています。
そんな歴史が完成させたのがこの織物でしょう。
いつまでたっても見惚れている私たちに、問屋さんは声をかけました。
「トルコ各地に沢山の部族が織り継いできたキリムがあるが、ここガジアンテップの織り手の織りに対するセンスは、群を抜いているね。色使いも技術も神業だよ。様々な文化の良い処を自分の物にしてきた部族だよ。銅製品が昔から伝えられているし、この地域は手仕事が盛んだったという歴史も影響しているはずだ。」
私たちは、ようやく腰を上げキリムに近づいてみました。
まるで機械で織られたかのように滑らかな織りに使われている縦糸は、縫い糸の様に細い綿糸です。ウールより丈夫には違いありませんが、手で紡いだ綿糸にどれだけの時間をかけたのでしょう?色調やデザインの組み合わせを考えながらの縦糸作りは、きっと楽しい時間だったでしょう。
20年前に2枚譲り受けて以来、探し続けたガジアンテップですが、これ以上の出来栄えには、今だ、出合えません。
遊牧民がもっと開放的であったら、ガジアンテップの技法とセンスが各地に伝えられていたら、トルコキリムは今より高い評価をエンジョイしていたかしら?など、色々なことを想像させてくれるアートです。
眼=邪視除け