KJ14520-B

KJ14520-B、83x84cm、トルコ, ガジアンテップ, アンティークキリム

キリムNo.： KJ14520-B

産地：トルコ, ガジアンテップ, アンティークキリム

寸法： 83x84cm

価格： 154,000円

ガジアンテップは、アナトリア南東部シリアとのボーダー近くにある町です。昔から交通の要所として栄え、「南のブルサ」と、たたえられたほどの地域です。ブルサは、オスマン帝国の創成期の首都であり、京都のように古く落ち着いた町です。
ガジアンテップの背後には、険しいアンチタウロス山脈がそびえていますが、南はシリアに続く肥沃な平原が広がり、穏やかな気候が楽しめる土地です。

１９９６年に出合ったキリムです。「珍しいアンティークだよ。シリアの近くのガジアンテップのものだ。」と、広げてくれたキリムは、４ｘ２ｍほどの大きさです。瞬間目に飛び込んできたのが、所狭しとばかりに織りこまれた「狼の口」です。
｢迫力ある！｣「追いかけられそう！」「細かい織り！」「艶やか！」「アートね！」、次々と驚きの言葉を発しながら、だんだんとキリムに引き込まれていった私たちです。

茜、黄、藍と濃い天然の茶でまとめられたキリムからは、大きなエネルギーが発せられています。沢山の狼の口は、優しい目を通して織り込まれています。イメージした黒い色は、天然の濃い茶の糸にインディゴ藍を掛け、一層黒色に近づけており、織り手の力の入れようが伝わってきます。
既に百数十年も経過したキリムは，所々に擦れが見え修理が必要です。でも、今を逃したら２度と出合えないのがキリムです。思案の末、あるがままのキリムを手に入れました。

２０年が過ぎた現在、修理技術は身に着けた私達ですが、時すでにおそし、今のマーケットには、アンティークを修理出来る糸がありません。考えに考えた末、６個のクッションとサイズの違う３枚のキリムになりました。

小さくても大きなエネルギーを発しているのは、デザインはもとより、染色の力と上等の糸の力、そして織り手の力の三拍子が揃ったおかげです。
熟練した織り手は、縦糸を強く細く撚っています。その縦糸に織り込む横糸も、糸のように細く固く撚られています。糸を撚りながら練られたであろうデザインは、狼を羊の敵ではなく守り神としてとらえているようです。
大らかな発想ながら、永遠とも思えるほどの時間を掛けてこれを織り上げた織り手に感謝です。