キリムNo.: KJ18776
産地: エルズルム, アンティークキリム
寸法: 193x122cm
価格: 682,000円
ずらりと並ぶキリム問屋さんの一つのウインドーの中に、真っ白な色がありました。
近づくと光を浴びたキリムの白色は一段と輝き、天に向かうミフラブ文様のオレンジと黄緑がまるで、パラダイスを表現しているようです。細かい織りは、キリムの上等さをさりげなく伝えています。1998年に手に入れたエルズルムも100年を超え、アンティークの仲間入りです。
エルズルムの伝統的なミフラブ文様のキリムは、アーチの中に楽園や天国を象徴する緑色が使われ、このようにたくさんの柄で埋められています。
東北トルコの山岳地帯エルズルムは、冬は氷点下、夏でも20度を超えることが珍しい地域です。染色に重要な冷たい水のお陰で、コレクターたちの羨望の的のような、この様に素晴らしいキリムが織り継がれてきました。
上等のウールは、無駄毛がなくなり艶やかです。コットンの白は、時間が経つごとに白さを増し、キリムに一層のコントラストを与え華やかにしていきます。
織り手は、100年以上使い継がれる自分の作品に、古くなるほど白さを増すコットンを使いました。白色を光に例えた織り手の創造は、世界を包む光は白ければ白いほど暖かく明るくなり、その力を増すと考えたのでしょう。
織り手は、草木と化学染料を使い分け、長い時間と大きなエネルギーを掛け「永遠の楽園」を織りあげました。
来生を信じるイスラム教徒の楽園は、一年中温暖で、植物が咲き乱れ、たわわになる豊かな果物、天空に飛ぶ鳥、そして溢れんばかりの水のある世界です。オレンジと黄緑は、織り手の楽園です。真っ白な白は、楽園を照らし包み込む光です。
長い時間の末、今、ここに織り手のイメージする世界が展開しています。
水や草木の少ない乾燥地帯で生きたからこそ生みだされた織り手の創造の世界は、溢れんばかりの水の中で暮らす私たちに、彼女の自然との向きあい方を教えてくれます。