キリムNo.: KJ37645
産地: ムット, オールドキリム
寸法: 111x73cm
標高が約2000m、植物の少ないムットですが、織り手は様々です。時にこのようなキリムに出合えます。
60年位たったキリムは、使い込まれ無駄毛が取れており、ウールのツヤが何回か重ねられた黄金色を、光と共に引き出してくれる逸品です。ボーダーに見える濃い茶は、天然の羊の色です。
縦糸にコットンを使うキリムを時々ムットで目にしますが、この織り手は、縦糸に縫い糸のように細い青色と白色のコットンを撚り合わせて使っています。何でこんなに面倒な仕事をするのか、創造力に長けた遊牧民のおばあさんに直接聞いて見ないとわかりません。
少々太めに撚り合わせた綿の縦糸は、このキリムに程よい厚みを与え、横に入れられている黄金色の表情を一層ゴージャスに、生かしています。
これは日没の風景でしょう。
雨のほとんどない乾燥地帯の大きな空は、毎日、違った表情を織り手に見せてくれます。忙しい一日の終わり、フーッと一息ついたとき見上げた大空は黄金色に染まり、ねぐらに帰る鳥たちの群れは、明日も晴れるぞと言っているようです。
印象強いその色を染め出した織り手の染色技術のお蔭で、乾燥地帯の夕空を垣間見る事が出来るのは幸せです。
また、織り手は、両側の伝統的な櫛のデザインで遊びを見せています。大空を飛ぶ鳥を数えていたのか?遊び心からか?キリムの面白さが小さな画面一杯に生きています。
色だけで表現されている印象的なキリムは、モダンアートのようで、使い勝手の良いキリムです。ドアを開くたびに目に飛び込んでくるリッチな色調は、持つ方の色彩の世界を広げてくれるはずです。
鳥=幸せの予感、櫛=幸せな結婚を願う