キリムNo.: KJ34001
産地: マラティア, オールドチュアル(衣類袋)
寸法: 127x76cm
価格: 132,000円
問屋さんで最初に出合った時は、クッションのような形のチュアル(衣類袋)を一枚の布に開いた状態で、上下が重く、文化なのか?インテリアなのか?どちらともつかない、可愛いけれど野暮ったい古布でした。でも、良く見ると、上等のウールを使いなされているジジム(刺繍)織りは、規則正しくリズムが聞こえて来そうに軽やかです。
孫娘のための嫁入りの持参品チュアルを織る織り手は、孫の幸せな将来を願いながら、あるいは無心で神様と心地よい対話の時間を楽しみながら、織りを堪能していたのかもしれないと感じさせるほど、ジジム織の部分には織りにブレがありません。
私たちの手できれいにおめかししたキリムは、現代インテリア空間で活躍します。
家族の衣類をしまう大きなクッションのようなチュアルは、直径4~5mの円いテントの中、寛ぐときはクッションの役目も果たしました。円形のテントをぐるりと囲むチュアルやヤストク(枕、小物入れ)を、どの織り手も人目にさらされる表側は凝った柄や色使いで織っています。人目につかない裏側は、縞柄や無染織の毛で単調に織られています。
15~6歳で嫁入りする娘に持たさなくてはならないキリムの数は、長さ約4mx幅約1mのランナーを含めて24~5枚にもなります。15年でそれらを用意するには、娘が生まれた瞬間から、毎日、織りを続けなければできません。
時間との競争のキリム作りに、少しでも時間を節約したい織り手である主婦たちの心情が見えるのが、このような袋の裏側です。
表の凝ったジジム織りを終えた織り手は、夢のような神様との対話の時間から現実に戻りました。主婦の顔に戻った織り手は、早く作り終えたい一心で、藍と茜の縞柄を織っていきます。現実の時間に忙殺されながらの織りは、まるでスカートをはいているかのように
広がっています。同じ目数なのに、よくまあ!!この大らかさがキリムです。
遊牧と言う厳しい現実の時間の中にも、想像力と創造力を十分に磨く心豊かな時間がありました。好奇心溢れた織り手たちが見せてくれる仕事は、生きる事のあるべき姿を、広い幅の中で生きた彼らを見せてくれます。
目=邪視除け、 羊の角=繁栄、力強さ、 鳥=幸せの予感