キリムNo.: KJ19530
産地: コンヤ、草木染キリム
寸法: 146x104cm
価格: 154,000円
1999年、目に入ったキリムは、コンヤの伝統的な力強いデザインでありながら、なぜか優しさを漂わせていました。一枚の隅から隅まで、織り手の細やかな神経が行き届いているキリムの周りを回っているうちに、答えが見えてきました。
普通、手紡ぎ糸を使ったキリムは、糸にぼこぼこ感があり、それが手紡ぎと言う贅沢の象徴で、価格の高さなのです。
この織り手は糸作りの名人なのでしょう、均一の手紡ぎ糸が、伝統的な力強い色調のキリムに優しさと滑らかさを与えています。そして、始めから終わりまで丁寧に編み込まれている三つ編みが、エネルギーあるキリムに、穏やかさと柔らかさを与えています。
フサの始末が気を惹くとは、織り手の織りの腕の見事さに脱帽です。
当時は、基幹産業として輸出用キリムの生産が、各地で盛んに行われており、コンヤも、輸出用キリムの生産に励みました。コンヤは他の産地との差別化として、価格競争から離れ、手紡ぎ糸を使い先祖から伝え継がれた手法の草木染で、キリムの輸出に挑んだのです。
11~13世紀、セルジュク朝トルコの都であったコンヤは、常に宗教、文化、交易の重要な中心地であり、キリムの集散地として栄えました。コンヤのキリムは、アナトリア(アジア側トルコ)の中でも、質、量、構成に優れ、何世紀にも渡り膨大な数のキリムが織り継がれてきました。
そのようなコンヤの選択は、先祖のスタイルを受け継ぎ、伝統的なキリムを世界に紹介することでした。「良いものは良い。」をテーマにした懸命なチャレンジは、織り手のやる気を一層奮い立たせ、実力以上の作品を織り上げていったのです。
20年以上が経過したこのキリムは、藍、緑の色に褪色が見られます。何回も色掛けをした糸は、光の加減で複雑な色調を見せてくれます。
織り手の心意気を感じながら毎日目にするキリムは、持つ人の一部として、生活にも、気持ちにも潤いを与えながら、上等のウールの無駄毛がなくなる頃には、エレガントに輝くキリムになっているでしょう。
ミフラブ文様=礼拝用デザイン 樹=不滅の繁栄 狼の口=邪視除け
足かせ=友愛 櫛=幸せな結婚を守る