キリムNo.: KJ13168
産地: コンヤ, ベイリーオールドキリム
寸法: 258x96cm
価格: 275,000円
1995年、2月に手に入れたコンヤのキリムは、もう100年に近い逸品です。
雪の降る中、問屋さんのドアーを開けると、光輝くキリムから「ウェルカム!」との声が聞こえたように包み込むような暖かな表情で、私達を迎えてくれました。
「ここは暖かな春ね?」と言う私たちに、「雪が続いているよ。窓の外は真っ白、部屋の中は一足早い春の訪れ。どう? 美しい光景だろう。寒いけれど気持ちだけは、私からのウェルカムを受けとって。」と、大きな笑顔を問屋さんは見せてくれました。
キリムを始めて7年、まだまだ初心者の私達は、目の前に広がる春爛漫の光景に、心躍りました。多くの問屋さんが石油ストーブで暖を取っていた当時のイスタンブールです。
広い店でキリム選びをしていると、底冷えしてくるほどの寒さでも、問屋さんの暖かい気遣いに、心も、体も温められたような思いを何回もいたしました。
暖かいお茶をいただき、ストーブに手をかざし動かない私たちに、「これはモスクに寄贈されていたキリムだよ。見飽きることがないほど素晴らしい色調だ。ペンキのサインが見えるだろう?幸せのグッドラックサインだよ。」と、問屋さんは声をかけました。
イスラム教徒である遊牧民は、一番上等のキリムをモスクに寄進したそうです。神様のいらっしゃる来世は、天国であり、楽園です。その楽園を夢見て現世を生きる織り手たちが、最上級のキリムをモスクに寄進したのはもっともな事です。
コンヤの100年に近いキリムは、とびっきり上等のウールが使い込むほどに輝きを増し、どこに置かれても光り輝いています。
パステルに染められた黄緑系の色調は褪色し、複雑な表情を見せ見飽きることがありません。染めた当時のままの濃い赤も、深くきれいです。藍色が柔らかなパステルの藤色になり、織られた当時よりキリム全体に立体感を作っているようです。滑らかでしなやかな織りは、キリムの透明感を一層引出しています。
誰をもこの温かさと美しさで包み込みながら、誰からも賞賛を浴び続けたキリムであるからこその存在感が、このキリムのパワーの源です。
*下フサ上にペンキの跡があります。
あえて糸を入れ替えないのは、モスクへの寄進用キリムであったためとの説明を受けました。
櫛=幸せな結婚を守る
水の流れ=生命を支える水が常に身近にありますようにとの願い