キリムNo.: KJ9094
産地: イラク、ヘルキ族、オールドキリム
寸法: 228x90cm
クルド系部族であるヘルキ族は、トルコ東部やイラン北部を移動した人々です。
イラクのキリムは、トルコのマーケットではあまり見かけることがありませんが、これは、
1992年、私達がまだキリムの価格もわからない初心者であった頃に手に入れました。
独特なからし色を基調に、藍、赤、ピンク、オレンジ、抹茶、紫など、溢れんばかりの色と白いコットンの組み合わせは、初めて見る色合わせで印象的です。赤とピンクにオレンジ、間違えると派手でやぼったくなる色合わせですが、アクセントのコットンの白に目がいくせいか、華やかなキリムになっています。隣に置く色の合わせ方が絶妙で、買うしかありませんでした。
乾燥地帯の土獏を想像すれば、太陽に負けないほどの強い色調で華やかなキリムが、彼らの日々の生活を明るく楽しく彩る調度品であった事が理解できます。
二十数年が経ち、世界も人々も変わった現在ですが、相変わらず濃い色調が美しい見事なキリムは、織り手の技術力と創造力の世界へ私たちを誘います。
真っ青な大空に浮かぶ雲? 真っ暗な夜空に輝く満天の星?あるいは冬の大地に降る雪?何がモチーフなのかと想像をかき立てるコットンの使い方は、独創的であり、効果的です。
白い綿糸は、使い込むほど、時間が経つほど白さを増していきます。ウールが落ち着いて白さを落としていくため、そのコントラストは時間と共に強くなり、織られた当時以上の華やかさを持ったキリムに変わっていきます。
織り手には、キリムは決して素朴な家具や民芸品でなく、キリムを織ることは限りなく高い所を目指す自己鍛錬であり、自己表現のキャンバスなのです。
織りを重ねるごとに腕を上げる織り手のキリムは、いずれ工芸品としてキリムの文化を語る語り部のように、人々の心のオアシスのような存在になっていくことでしょう。
そんな気合いが伝わってくるキリムは、まさにアートそのものです。
眼=邪視除け、 ドラゴン=豊かさをもたらす、 ベレケット=豊穣、 鳥=幸せの予感