キリムNo.: KJ17484
産地: カフカス地方、ダゲスタン、アンティークジジム
寸法: 232x133cm
旧石器時代以降の遺跡が数多く残るダゲスタンは、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈の北東にあります。西と南の大部分がコーカサス山脈に連なる山岳地帯で、それは国土の70%を占め、北部は草原地帯です。昔より、様々な民族移動の通過点であり、北方草原の騎馬遊牧民とトルコ、イランなどの南方の牧畜民の接点となってきました。同時に、アジアとヨーロッパを結ぶ草原とオアシスの中間点の為、文明の十字路的役割を果たしてきた地域です。
人々が住む村々は、標高が1000~2000mにあり、羊やヤギの牧畜が中心です。彼らは、冬は絨毯やキリムを織り、金属加工などの手工芸製品の製作で、昔から生計を立ててきました。ダゲスタンの織物は伝統工芸である金属細工と共に、重要な位置にあり、ペルシャ絨毯の影響を受けた織物の製作が、16~17世紀に始まったとされています。
降雨量が少なく、山間部では牧畜が盛んで良質のウールが供給され、天然染料も豊富です。
柄は幾何学文様に花柄、または幾何学化した動物、木や植物も伝統的な文様として織物の中に見られます。
これはアンティークになったスマック織りです。スマックはイランで主に使われている技法で、張られた縦糸に横糸を入れながら平織りをします。その上に斜めに色糸を掛け、刺繍をするようにデザインを織っていきます。大変に時間のかかる作業ですが、ペルシャ絨毯の影響が色濃く反映された、ダゲスタンならではの柄付けと細かい仕事は魅力的です。
100年以上も経ったこの織物には、藍色の修理糸が各所に入っています。その色は、糸を入れる度に変わっています。修理をする子孫が若くなってきているせいであり、織り手たちの持つ色の情報が、昔と比べるとはるかに多くなっていると言う事でもあります。
最初の色調が新しく入れられた修理糸と共に創り出す、複雑で新しい色の世界は、クラシックでありモダンであり、見る誰をも不思議な色の世界にリードします。
この織物をいつの時代も大事に使い継いできた人々が、自然の力と共に創り上げた共同作業が、このスマックの独特でこなれた上品な雰囲気を創っています。
羊の角=繁栄、力強さ、 眼=邪視除け、 ドラゴン=豊かさをもたらす、 水の流れ=生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い、