KJ16009、223x147cm、ロシア、カラバ、アンティークキリム

キリム マイギャラリー

キリムNo.: KJ16009

産地: ロシア、カラバ、アンティークキリム

寸法: 223x147cm


1997年の春に出合ったあったカラバキリムです。
「おしゃれ!」「きれい!」「かわいらしい!」の言葉が、スタッフの口から出ました。幾何学文様のキリムを見なれた目には、花柄を連想する伸び伸びしたデザインは動きがあり、目新しく新鮮です。また、撫子(なでしこ)のようなピンク系を含んだ赤や中心に使われている青緑、ベイジュ系の色たちは、現代の見なれた色です。若い織り手の顔が見えるクラシックな香りのするアートなキリムは、私達を招いていました。

溜息が出るほど高値の伝統的カラバキリムは、色良し、織り良し、状態良しで、文句の付けようのない上等なキリムです。当時、マーケットに出回っていた憧れの伝統的カラバキリムは、何度も色が重ねられた濃く黒に近い藍と、血のような深い赤色のどこまでも濃い色調で、神業と思えるほど高い技術で織られたキリムです。

水の少ない乾燥地帯の植物は、その根に色素をギュッと蓄えるお陰で、濃い色出しができました。昔のキリムの多くの色が濃いのは、現代よりはるかに新鮮だった空気と水のお陰です。当時の自然環境が、キリムに息吹を与え、織り手の創造性と技術を一層鍛えました。

しかし、濃い色調と格調高い花柄の伝統的カラバは置く場所を選び、インテリアとしてより織りの文化を伝えるキリムとしての価格が付いていました。
床に広げられた何枚もの伝統的カラバの中に置かれたこのキリムは、格調高さとは別の、誰にも好まれそうな優しい表情で輝きを放っていました。穏やかな雰囲気は日常使いしたくなるほど優しく、愛らしい色調は傍に置いて毎日眺めたくなるほどのキリムです。

高い技術を持った若い織り手の手の動きや心情が、キリムから伝わります。
好奇心一杯の若い織り手の色使いは、当時としては斬新であり、評価されたことでしょう。が、キリムを良く見ると、横糸の下にある縦糸の撚り具合が一定ではありません。気の遠くなるほどの時間を使い、無心に縦糸作りを続ける織り手の糸は徐々にうまさを増し、横糸を作る頃には熟練した織り手と同じほど滑らかで均一の糸になりました。
織り上がった時はきれいに滑らかだったキリムですが、先祖から伝え継がれる間の洗濯のせいか、織りが少し波打っている所が見えます。

カフカス地方には、伝統的にこの様に細かい織りが伝わっています。もう織りの終わってしまった地域もあり、文化や伝統としてのキリム作りはもはや無くなり、益々、貴重品となって行くのです。






▲トップに戻る