キリムNo.: KJ31536
産地: バルケシール、オールドキリム
寸法: 214x139cm
古いキリムの共通点は、糸、織り、染めの三拍子が揃っている事です。
それらのキリムには、深く鮮明に染められた上等の糸が使われ、織り手の高度な技術が生み出した工芸品でありながらも、伸びやかさや楽しさが想いのままに表現されています。
アナトリアの代表的染料は茜です。乾燥地帯の植物は,自力で濃い色素をその根に蓄えました。茜は4~5000年も前から染色に用いられた染料で、アナトリアの赤は「トルコ赤」の名で、ヨーロッパでは知られていました。
遊牧民は、生まれた瞬間から、自然の中で自然と共に暮らした人々です。
雨量の多い日本とは違い、乾燥地帯では雨が少なく草や木々の種類も量も限られていました。少ない草の根や木の皮などを採取し、乾燥させ、保存しました。薬草はまず薬として自家用に使用し、残りは市場で物々交換ができる貴重品でした。それらの薬草の多くが染色の材料だったのです。
量も種類も少ない乾燥地帯の植物採集は、何年もの時間が必要です。採取後、三年乾燥させた茜からは淡い赤色が、7年乾燥になると濃い紫色が取れます。この地域の水の少なさとこれほどかかる時間が、透明度の高い染色につながっているのです。
キリムは色こそがすべてです。美しい色の響きこそがキリムの最大の魅力です。透明感のある澄んだ色、深い色、底光りするように輝く色は、自然からの恵みであり、それを受け取る感性と技術を身に付けた者にのみ与えられた、神様からの贈り物です。
バルケシールには色調の濃淡だけで表現された、あるいは色調の濃淡の中心にワンポイントのデザインを織り込んだだけのキリムが織り継がれてきました。
このキリムの一番の驚きは、濃淡に染め分けられた様々な赤色です。一体何色の赤色を出したのでしょう?それぞれの赤色の色相が違い、同じ表情の赤色探しが楽しめそうです。
一見単純に見える単色のキリムですが、微妙に色の違う何色もの赤色は、音楽が聞こえてきそうにリズムがあり、織りの表情からは、自然の動きすら感じられます。
茜は染色過程での媒染剤、発色剤、煮出す温度、糸の量、染色の回数などにより色は、ピンク、バラ色、あんず色、緋色や赤褐色など、様々な色に変化する魔法の染料です。
眼=邪視除け、鳥=幸せの予感