キリムNo.: KJ16097
産地: 地中海岸アナトリア、レイハンル、アンティークキリム
寸法: 136x95cm
いつも「きれい!」と溜息をつきながら眺めるだけだった遠い存在のレイハンルを手に入れたのが1997年です。
レイハンルの深紅が気になっていました。赤色を茜で染めるキリムが多いトルコで、どう見てもコチニールもしくはローズ系の色幅の広い深紅色は、とても魅力的で新鮮でした。藍も紺色、青色、水色と染め分けられています。おまけに深緑からオリーブ色まで、実に色沢山で、染色技術の見せどころがレイハンルキリムなのです。
レイハンルはシリア国境に近い町です。19世紀中頃、カフカス地域から移動してきた精緻な織りの技術を持った人々の影響を受け、繊細で完成された織物が生まれました。
アナトリアキリムの多くが、テントの中の家具であり、娘の嫁入りの持参品などの自家用に織られたのに対し、レイハンルキリムの抜きんでた質の良さと美しさは、おそらく初めから売る目的で織られたキリムと考えられてきました。
しかし、この地域での織りは20世紀初めに終息してしまい、レイハンルキリムの価値は益々高くなっているのが現状です。
これは、使い継がれ無駄毛が取れた100年も中頃のアンティークキリムです。店の奥のオーナーズルームに広げられたキリムは、自然光が上質のウールをより輝かせていました。
19世紀後半、北アフリカのカナリア諸島で盛んに生産された動物染料のコチニールで染められた深紅は、見た事のない独特の華やかさで気を惹きます。藍色も深緑も何色にも染め分けられ、おまけにアクセントに使われているコットンは、時間が経過するほど白さを増し、そのコントラストがこのキリムをいつまでも華やかなものにしてくれます。溜息が出るほどのセンスと技術力です。
華やかなのに落ち着いたキリムの色使い、自由奔放な柄付けなのに考え抜かれた構図に、誰もが一目でこのキリムの価値を理解します。色が、柄付けが、織りが、見る者の想像力を膨らませ、織り手の世界が近づいてきます。
タペストリーとして織られたキリムはレイハンルの伝統どおり、上等のウールが細く強く撚られています。細い縦糸に横糸をビッシリと入れているのは、熟練した織り手です。
百数十年前、水も空気もきれいだった時代は目に映る光景よりも遠くの想像の世界まで見渡せたのでしょう。思いっきり創造を巡らせ織りをする織り手の感性は、どこまでも広く深く、頭の中の引き出しは、はみ出しそうなほど沢山の情報で満ちていたことでしょう。
眼=邪視除け、 ドラゴン=豊かさをもたらす、 ベレケット=豊穣、狼の口=邪視除け、 足かせ=友愛、