キリムNo.: KJ9937
産地: カフカス地方、アンティークキリム
寸法: 169x119cm
1992年出合ったアンティークキリムは、未だどこのものか特定できません。
ボーダーを囲む藍色のダイヤモンド柄は、イラン北部クルディスタンのハルシン(Harsin)やハマダン(Hamadan)のキリムや、南西部のローリー族に見られる柄でしっかり織られています。中央の大きな二つの眼は、アゼルバイジャンのシルヴァンの柄付けに似ています。
でも、カフカス地方のキリムで、織り手がこれほど様々な柄を織り込んでいるものは、見た事がありません。このように豊かな柄付けと色彩感覚はトルコの織り手のものです。
天然の白と茶が使われた縦糸は、見えない部分であるにも関わらず、配分を変え表情を持たせ、強く固く細く作られています。これぞ高い技術を持った織り手のアゼルバイジャン・スタイルです。そして、修理糸が入りにくいほど細い織りもアゼルバイジャンの伝統です。
ひときわ惹きつける力を持つのがアンティークです。100年以上の時間と自然の力がキリムを一層光らせるのです。糸、染め、織りの三拍子が揃った上等であるのは言うまでもなく、それ以外に様々の何かを感じさせる力を秘めているのがアンティークです。
どこの誰が織ったのかは、とても気になる所です。
「どこ?」と聞く私達に、問屋さんは「アゼルバイジャンのイラン系の織り手が、どこかで創造力が一杯に織り込まれたレイハンリのようなキリムを見た。この柄の多さはレイハンリにあるだろう?織りが大好きな高い技術の持ち主は、伝統のキリムの中に自分を表現した。 私の見立ては、創造力に富んだアゼルバイジャンの織り手のものだ。
遊牧民は移動を繰り返しながら生きた人々だよ。様々な地点で情報交換しながら感覚を磨き続けた彼らだ。手が動く感性豊かな織り手なら、好みの柄を織ってみたくないかい?
遊牧民は大地という懐に抱かれた大らかで自由な人々だ。キリムは型紙を使わない織物だろう?当然、感覚的であり、創造性に富んでいるのがキリムだよ。」と、話しました。織り手のその日の感情表現がキリムの基本です。その言葉には説得力がありました。
すっかり無駄毛が取れ芯だけになった良いとこ取りのキリムです。何度も重ねられた植物の色が見せる優雅で複雑なアートは、見たままで!感じたままで!と言っているようです。
眼=邪視除け、 ドラゴン=豊かさをもたらす、ベレケット=豊穣、 水の流れ=生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い、