キリムNo.: KJ14472
産地: アイドゥン、チネ、 ベイリーオールドキリム
寸法: 150x115cm
1996年、アイドゥンの古いキリムを探している私達に「これもアイドゥンだよ。」と問屋さんが広げたのは、驚くほど柄が一杯の細かい織りの華やかなキリムでした。織り目がびっしりと詰まっているせいで、キリムがとても立体的に見えます。
「中心に生命の樹が織り込まれた礼拝用デザインは、アイドゥン・チネのものだが、むしろエシメに近いキリムだよ。この地域は様々な遊牧民が行きかった地域の為、お互いが刺激し合って良いキリム作りに励んだんだ。その結果、どちらとも言い難いキリムが生まれても不思議はないね?」と、説明してくれました。
この頃、私達が知っていた有名なアイドゥンは、細長くて大きなキリムが柄で埋め尽くされ、多色であるにもかかわらず、藍や茜、ベージュのシックな色調でした。
あまりにも印象の違うアイドゥンに、キリムの幅の広さを教えられました。
現在、輸出用キリムの一大産地であるウシャクにあるエシメには、細かい文様を織り込んだミフラブデザインが織り継がれています。この様に赤使いを楽しむキリムが多く、可愛らしい雰囲気が印象的です。
アイドゥンの織り手も画面一杯に柄を付けます。
どちらも伝統に忠実に従いながらも、織り手の感性に従い新しい柄やその時の流行と考えられる表現を織り込んでいます。どの織り手の仕事も自分を主張するのではなく、一族の末席に加わったうれしさと思われるような表現に、伝え継ぐ事の意味を教えられます。
ほぼすべての色を化学染料で染め、思いっきり豊かな楽園を創造したのは、エネルギー溢れたアイドゥンの熟練した織り手です。嫁ぎゆく孫娘の為に織り込んだ柄は、幸せ、喜び、願い、永遠、繁栄、豊かさなどです。どこまでも永遠に幸せであってほしいと願う祖母の熱い思いが、様々な柄と色から伝わってきます。赤色はエネルギーと癒し、黄緑は彼らの信じる天国であり楽園を表現しています。
化学染料を使いながら、織り手は植物染料と同じ工程で、丁寧に色の濃淡を表現しています。使い込まれたキリムにもかかわらず、織られた当時の色調を保っているキリムは、きっと、織り手が願った様に見る者に熱い心を贈り続けてくれるでしょう。