キリムNo.: KJ22405
産地: アイドゥン、オールドキリム
寸法: 153x109cm
KJ-14472のアイドゥン・チネから4年後、相変わらずアイドゥンに目が行く私達が出合った二番目のアイドゥンは、カラクズル村という所のものです。
「珍しい?」と質問する私たちに、「今では、良質のアイドゥンを手にすること自体が珍しいよ。この色出しが出来た織り手は成長しただろうな?」と答えた問屋さんでした。
アイドゥン・チネの主張ある細かい柄付けとは違い、ゆったりと流れるように大らかな柄付けと形から、日々、懸命に織る事に取り組んでいる若い織り手の姿が浮かびました。
上等のウールを与えられた織り手は、懸命に縦糸を紡いでいます。
熟練した織り手の糸は、機械で作られたかと思えるほど滑らかで均一ですが、まだ修行中の織り手達には、骨の折れる大変な仕事です。雑念を振り払い集中する努力から始めないと、均一の太さの糸は作れません。それは経験を積み重ねるしかないのです。
織り手の撚った糸の固さと強さは十分ですが、太さのバラつきが集中力不足であることを、語っていたのです。なるほど、問屋さんの答えはこれだったのです。
アイドゥン・チネと同じ赤、黄緑、藍色の色調のキリムは、植物染料で染められています。
糸を染める作業は感覚が大きく作用します。織り手の色に対する感性は、織り上がったキリムを想像しながら、微妙に違う色の濃淡を生み出しています。
いつも空想にふけるほど感覚的な娘には、染色は楽しくてならない作業でした。なぜなら、偶然手にする色は神様からの贈り物だからです。決まりに従う事より、感覚を思いっきり表現することが嬉しい織り手達が、代々、伝え継いできたのがキリムなのです。
時間を忘れ没頭した染色は光にも好まれ、長い時間をかけ光が褪色させた草木染めの醍醐味を私たちは今楽しめるのです。
未熟だった織りの技術ですが、丸く織り上がったキリムは、大らかな柄付けとぴったりで、素朴感のある雰囲気が、見る人に笑顔を運びます。技術が伴った頃にはアイドゥンを背負う織り手になったであろう織り手の若いころの作品に出合えたことは、幸せです。