キリムNo.: KJ11166
産地: アイドゥン、オールドキリム(ウール/ウール)
寸法: 313x164cm
西アナトリア、エーゲ海地方のアイドゥンは、13世紀には「ギュゼルヒサル(美しい城)」と呼ばれていたほど、肥沃で水の豊富な土地として知られ、貿易と傭兵を雇う中心地としても栄えました。豊かな気候や盛んな貿易などの恩恵を受けた街の活気や色彩は、織り手達の感性を鍛え、この様なキリムが織り継がれてきても不思議ではありません。
現在は、イチジクやオリーブや柑橘類の産地です。
1992年に手に入れた最初のアイドゥンキリムは、当コレクションルームで眠ること二十数年、オールドも後半のキリムになりました。時々、空気に触れさせるとき、先輩のKJ-12067と並べ、品評会を楽しみます。
伝統に忠実に従い几帳面に織られたKJ-12067と比べると、このアイドゥンは、豊潤な土地の恵みを一杯に吸収したかのような上等のウールが使われています。数十年の時間差が、糸の生成技術の進歩につながっている事も確かです。
素晴らしく上質の糸は、透明感のある色糸に染まりました。伝統に沿い先祖の作品を手本に、アイドゥンの伝統キリム作りに励む織り手です。しかし、織り手の豊かな創造力は、伝統に従いながらも独自性に向かっていきます。
眼、ドラゴン、ベレケット、エリベリンデ、狼の口、等の伝統柄を織り込みながらも、柄を間引き、天然の白いウールの面積を多くすることで、染色された色糸の深さと美しさを引き出しています。
創造性豊かな織り手も、伝統に従い大きなキリムを左右2枚に分け、織り進んでいます。織り上がった2枚を剥ぐ仕事が終わればキリムの出来上がりです。
2枚に剥がれたキリムの色は左右が違い、昼と夜あるいは青空と夜空が浮かんできます。そして、型紙を使わず織られたキリムの左右の柄は、所々合いません。でも、とてつもない時間をかけて織り上げたキリムの上質のウールは心地よく、鮮明な色調はメリハリがあり印象的です。キリムが織り手の女性たちの心模様の織物と言われる所以です。
織り手が無心に織ることに没頭できた時代は、はるか彼方になりました。