キリムNo.: KJ9245
産地: ハッカリ、アンティークキリム(ウール/ウール)
寸法: 208x159cm
茜をベースに鮮やかな赤色と暗く濃い赤色を染め分けているキリムに出合ったのは、1992年です。当時のキリムマーケットは、クルド系のキリムの全盛時代でした。グランドバザールの土産店もアラスタバザールの専門店も、藍、赤、白の伝統のクルド族のキリムで溢れていました。
そんな中、目に飛び込んできたのが、クルド族の織物の中で細かさNo.1と言われたハッカリのアンティークキリムです。
ゆったり見えるのに、しっかりした織物です。100年以上も使い続けられたキリムは、すっかり無駄毛が取れ、しなやかな表情は敵なしと言っているようでした。
「触ってごらん。」と促され触ったキリムは、羊のウール独特のザラザラ感がなく、ツルツルしていました。「100年使い継ぎ、すっかり無駄毛が取れ芯になったウールがこれさ。上等のウールだからこその結果だ。」とウール自慢をした問屋さんです。
ゆったりした空間に広げられたキリムは、光の加減で微妙な色調の変化を見せています。
茜にオレンジ系の植物が加えられた深く濃い鮮やかな赤色は、上質のウールのツヤがより赤色の美しさを引き出しています。その赤色に藍色が加えられたに違いない暗く濃い赤色は、キリムの中で分量を少なくし、キリム全体を引き締め、細かく織り込まれた柄を引き立てています。今では、渋く落ち着いた華やかさを演出しています。
これは部族長の娘の嫁入りの持参品キリムです。
画面のあちらこちらに銀糸が織り込まれた珍しいキリムです。銀糸のほとんどは摩滅していますが、その片鱗が見られます。
持参品キリムの中には、織る母や祖母のそばで嫁ぐ娘が相手と固く結ばれますようにとの願いを込め、この様に、ウール糸や綿糸、あるいは金糸や銀糸を結ぶ習慣がありました。
銀糸が使えるのは、部族長のように豊かさと実力を備えた家族です。
クルド族特有の上等のウールと鮮明で深い丁寧な染め、そして床にピタッと張り付く見事な織り、部族一の織り手の技量のすべてが伝わる最上級のキリムは、使う人を癒し、使う人にエネルギーを与え続けてきました。
長い両フサは、「隠れてしまう縦糸でも最上級のウールを使っていますよ。」の織り手のサインと問屋さんは言いましたが、どのように思われますか?
眼=邪視除け、 ドラゴン=豊かさをもたらす、 S字フック=邪視除け、 星=幸せへの予感、