キリムNo.: KJ18098
産地: モロッコ、ベルベル族、ベイリーオールドラグ(ウール/ウール)
寸法: 200x155cm
1998年1月、フェズからバスでアトラス山脈を越えマラケシュに向かった軽装の私たちは、アトラス山脈を覆う雪に驚き、寒さに震えながらも雄大な光景に見惚れ続けました。
ベルベル人の多くがアトラス山脈の南部にすみ、現在でも独自の文化と言語のもと、伝統的な織物を伝えていると聞き、彼らの織物が一番集まっていると言われるマラケシュを目指した私たちです。
ベルベルの織物は中東から北アフリカに伝わり、それぞれの地域で部族独自の織物となったと言われていました。トルコに様々な技法や素材があるように、モロッコのマーケットでも、目にしたことがない柄付け、色調や素材に出合いました。マラケシュの問屋さんで最も多かったのが、スマック織りと同じ細かい刺繍の技法のラグで、独特の暖色のカラフルな色調がかわいらしい織物でした。
最も惹かれたのが、ベルベル人の伝統的なオールドラグで、濃い茶、茶、グレーや白などの天然のウールが使われ、色糸で直線や曲線が描かれたシンプルなデザインのラグでした。固く強く撚られた縦糸に横糸を入れながら、その上に毛足の長いフワフワした糸を縦糸に結んでいきます。毛足が長いため、1cm位の間隔を開け結ばれた糸は、出来上がるとまるで絨毯と同じ状態になります。上質のウールは使い込まれ艶やかで、上等の織物です。
この布は、床敷きのみならず、寒い冬は外套や毛布がわりに使われたそうで、肩に掛けられる重さを考えた結果、長いフワフワの糸が間引かれたのではないかと考えました。色彩の少ないシンプルなラグは、モダンで使い易く、ヨーロッパやアメリカで空間作りにこだわる方々に人気があると言われました。
これは縦糸は天然の白いウールが使われています。横糸の黄色と黄土色を問屋さんはサフラン染めと言いました。日本ではパエリヤなどに使う高い香辛料ですが、処変われば、です。全体を囲む茶色は天然です。
藍色の出所はわかりませんでしたが、染料ははるか昔から人々の必需品として、世界各地の創造力豊かな女性たちにより、工夫され、使われていたのです。
世界中にある偉大な先輩たちが見せる傑作が、まるで宝探しのように、私たちの好奇心をくすぐります。