キリムNo.: KJ31592
産地: マラティア、シナン、アンティークキリム
寸法: 213x76cm
クルド人オーナーが案内してくれたのは、店の一番奥にある彼のコレクションルームです。鍵のかかった箱から、大事な宝物であるかのようにうやうやしく取り出したのが、先祖の織ったチュアル(衣類袋)です。
織りも染めも見事なアンティークはマラティアの織物としては、とびっきり薄く細かい織りです。 深い色調は、先祖代々使わる家宝として十分な実力を備えたものでした。部族長クラスの嫁入りのキリムであったことを伝える銀糸をなぜながら、まるで懐かしい人々がそこにいるかのように、テント生活を楽しそうに語ってくれたオーナーです。
特に目を惹くのが青色と紺色です。
初めて目にする青色は、シアンとマゼンダの絶妙な配合です。紺色は、色の三原色である赤、青、黄に黒を合わせて出しますが、この織り手の場合、濃い羊の毛をインディゴで染めることにより、より黒色に近づけています。まだ、化学染料が手に入らない当時の織り手たちの努力と工夫には、頭の下がる思いです。
艶やかなウールで染められた他のどの色も濁りがなく、織り手の自信と自負が伺えます。
クッションのような形だったチュアルははがされ、使い易い一枚の布になりました。
そこには、伝統の重厚感と当時のモダンなポップ感の、二つの世界が展開されています。人目に触れる表は、気を集中させた工芸品のようなジジム織りで、裏で隠れる部分は、さりげない縞模様です。これが創造力を備えた織り手の表現力であり実力なのです。
糸、染め、織りの三拍子が揃い、織り手の実力のすべてが織り込まれたキリムは、代々の子孫に織りのバイブルとして、圧倒的な存在感を示しながら、織りとは何かを教え、問いかけ続けてきたのでしょう。
無駄毛が無くなり光輝くキリムは、誰からも愛されてきたという事を物語っています。
ドラゴン=豊かさをもたらす、 眼=邪視除け、 クロス=邪視除け