キリムNo.: KJ19495
産地: ムット、アンティークキリム
寸法: 110x78cm
価格: 198,000円
中央アナトリアの南、トロス山脈の中腹にあるムットのアンティークキリムです。
1999年、柄付けに惹かれ手に入れました。
ミフラ文様のキリムは、モスクでお祈りの際、三角形を神様がいらっしゃる方向に敷き祈る為の敷物です。
これは、礼拝用のミフラブデザインですが、心を静め落ちついた気持ちにさせるより、集中力が切れて注意が散漫になりそうな楽しい柄付けです。心静かに祈るキリムと言うより、神様に聞いてもらいたい願い事が織り込まれたキリムに見えたのです。
嫁いだ娘が夫の為に織った礼拝用キリムではないでしょうか。
織り手はミフラブ文様の中に、五つものイヤリングを織り込んでいます。短いイヤリング、長いイヤリングが彼女の溢れんばかりの気持ちを伝えてくれます。そして、ミフラブを囲んでいるのは、エリベリンデ(腰に手を置く女性)です。アナトリア(アジア側トルコ)の地母神と言われ、各地に見られるデザインで、繁栄、豊穣、多産を意味します。
幸せな結婚を守ると言う意味を持つ五つのイヤリングとエリベリンデを通し、夫との固い結びつきと将来の安定を毎日神様に願ったのでしょう。
モスクで礼拝をするのは男性で、女性たちは家庭あるいは特別に許されたモスクで礼拝を行います。共に礼拝が出来ない織り手は、彼女が望む幸せな結婚を、夫を通して神様に毎回お願いしていたのです。
気持ちを表現するこの様な方法をもった織り手達は、イスラム教の様々な制約もなんのそのとばかり、しなやかに受け止めています。このしなやかさがキリムを育ててきたのです。
織りも糸作りもまだまだ修行中の若い織り手ですが、丈夫な上等のウールは鮮明で深い色に染まっています。昔のこなれた色調と織り手の気持ちに暖かくなる楽しいキリムです。
ミフラブ文様=礼拝用デザイン、 イヤリング=幸せな結婚を守る、 水の流れ=生命を支える水が、常に身近にありますようにとの願い、 エリベリンデ=繁栄、多産、豊穣、
眼=邪視除け、 足かせ=友愛