キリムNo.: KJ36293
産地: コンヤ、オールドジジム
寸法: 90cm X 58cm
価格: 49,500円
上等のウールが使われているこのオールドジジムの横糸は、黒に近い天然の濃い焦げ茶に、化学染料の黒を掛け、真っ黒な黒糸にしています。何十年後の現在、その横糸の焦げ茶が顔を出し、光の加減で黒く見えたり、茶に見えたりする大人の雰囲気をたたえた織物です。
縦糸は、赤、黄、黒を混ぜて作った赤茶で染めています。この縦糸は半分までが、直毛のヤギの毛とカーリーな羊の毛を撚り合わせた糸、残りの半分はウールのみの糸、端の4本だけが朱色のウールです。違った動物の毛を使いながら、染め上がり具合の違いを楽しんだのでしょうか。それとも、新しいチャレンジでしょうか。面倒といった感覚より、新しいこの一枚に織り手が、どれほどの気持ちを込め、エネルギーを使ったのかが容易に伝わってきます。
藍色、草色、臙脂(えんじ)色、オレンジなど植物から取れる色を使いながら、織り手は黒という化学染料を使っています。草木では出せない黒は、長い間織り手の憧れの色だったのでしょう。
黒ければ黒いほど美しいとされた髪を「みどりの黒髪」と称えた昔の日本人は、黒は選びぬかれた色の一つと考えていました。これ以上に黒い色を、真っ暗闇の漆黒(しっこく)と呼び、黒色の美しさは漆黒にきわまるともいわれます。
似たような感覚が、大自然の中で暮らした織り手にもあったであろうことは、容易に想像できます。漆黒の夜空を見上げながら、黒色を使ったキリムをあれこれ想像する幸せに浸っていた織り手が、黒い化学染料を手にした喜びを画面全体に織り込んだ力作です。